「はじめに」
三十代の頃、アメリカで教鞭をとっていた。論理で物事が決まるアメリカに爽快さを感じた。帰国後、アメリカ流を貫こうとしたが、以心伝心、あうんの呼吸、腹芸、長幼、義理、貸し借りがもの言う日本では通じず、今度は論理の力を疑うようになった。そして情緒や形の大切さを考えるようになった。
四十代の頃、ケンブリッジ大学で教鞭をとった。論理を強く主張する人は煙たがられていた。論理よりも、伝統や慣習、誠実さやユーモアが重んじられ、以心伝心や腹芸まであった。
イギリスからの帰国後、情緒と形により大きな意義を感じるようになった。ここでいう情緒とは喜怒哀楽ではなく、懐かしさやもののあわれといった教育によって培われるものであり、形とは、武士道精神からくる行動基準である。
それら二つは、ともに日本の国を特徴づけるものであり、戦後少しずつ失ってきたものである。不況に喘いだ日本人は、改革即改善と勘違いしたまま、闇雲に改革に突っ走った。
市場原理化、アメリカ化は経済のみならず社会、文化、国民性に深い影響を与えてしまい、日本人は金銭至上主義に取り憑かれている。戦後、祖国への誇りや自信を失うように教育された日本人は、我が国古来の情緒と形を忘れ、欧米の論理と合理に身を売ってしまったのである。
日本は世界を均質にしようとするグローバリゼーションに立ち向かうべきだ。欧米支配下の野卑な世界にあって、孤高の日本として世界に範を垂れるべきであり、それこそが人類への世界史的貢献だ。
えー。
対訳版であるのに、日本語の方を要約してしまい後悔しています。気づくのが遅かった。(笑)
It is a photo of Ginkaku of Jishou-ji-temple.
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